やがて春が来るまでの、僕らの話。
別に2人に今日のことを隠す必要はなかったのかもしれない。
ハナエちゃんもいるからって、本当のこと言えばよかったのかもしれない。
でも多分、言ったらこいつらは今日まで色々考えて、色んなことを思い出して、新入社員っていう1番大事な時期を台無しにしてしまう気がしたから。
毎日が仕事で必死なときに、余計なことで頭遣わせんのも悪いなって、変な兄心が働いた結果がこれだ……
「ハナエと律くんはいつからこっちで会ってたの?」
少し落ち着いてきたのか、志月の声がいつものトーンに戻ってきている。
「最近、12月にたまたま、ほんとに偶然再会したの」
「ふーん」
ここまでは2人共納得して聞いてくれた。
問題はきっと、ここからだ。
「で?お前はいつからこっちにいたわけ」
カッシーの視線がハナエちゃんを見据えた。
黙って2人の前からいなくなった彼女を、責める様に……
「……私は」
そう切り出した声に、静かに耳を傾ける。