やがて春が来るまでの、僕らの話。
「見えてきた」
柏木くんの声に顔を上げると、少し向こうに赤い光が見えた。
神社の灯りだ。
「まだ年明けてないね?」
「もうすぐじゃん?」
近づくにつれ、人の数が増えてくる。
こんなに小さな町でも、やっぱり神社は混むんだな。
「とうちゃーく」
鳥居を潜り、私たちは境内へ入った。
敷地内では焚き火が燃えていて、そこで暖をとっている人たちがたくさんいる。
「取り合えずあそこであったまろーぜ」
「うん」
きっと学校の子たちも大勢来てるんだろうな。
きっと誰かに、見られているんだろうな……
「暖けぇー」
焚き火の前は、熱いくらいに暖かい。
パチパチと火が燃えていて、真上に広がる夜の空を少しだけ赤く染めている。
「なにお願いすんの?」
「ん?」
「初詣、神様になにお願いすんの?」
初詣……神様に、私はなにをお願いしよう。
「……世界が平和でありますように?」
「ハハ、規模でかすぎだろそれ」
真剣に答えた私の願いは、バカにされるように笑われた。