やがて春が来るまでの、僕らの話。

【柏木side】




ザワザワザワ…



神社の人混みの中、背を向けて黙り込んだ俺は三十秒くらい経って振り向いた。


「え……」


振り向いた先に、ハナエの姿がなくて。

傍にいたはずのハナエが、360度見渡してもどこにもいない。


「、…のバカっ!!」


小さく舌打ちをしたと同時に足は走り出していた。


せっかくの初詣が台無しだ。


いや、台無しにしたのは俺か?

いや、あいつか。

いや、やっぱり俺、………



「って、どっちでもいいよんなことっ」



とにかく捜した。

捜して捜して捜しまくった。


でもどこにもいなくて。

携帯も混雑してて繋がりにくいし、LIMEの既読もつかない。


家に帰った?

でも帰ってなかったからやばいし。


走りにくい雪道の中、とにかく必死に、息を切らして必死に捜し回った……


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