やがて春が来るまでの、僕らの話。



生きることは怖いのに、死ぬことにはなんの恐怖も感じない。


花火を見るこの時間すら、次の瞬間に人生が終われば楽なのにって、そんなことを考えてる。



希望なんてどこにもない。


光なんて一筋も見えない。



だけど……



だけど1つだけ、強く思ったことがある。


あの瞬間、強く願ったことがある。




───“俺が一緒に死んでやっから、安心しろ”




律くんに、死んでほしくない。


あの時、確かに強くそう思った。



「…あの人、自分を犠牲にしすぎなんだよ。俺のことなんてほっとけばいいのに」



独り言みたいな声に、ハナエはなにも言ってこない。

ただ黙って、俺の話を聞いている。



「…律くん、俺が生きててくれればそれだけでいいんだって」

「……」

「他はなんにもいらねぇんだって…」

「、」


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