やがて春が来るまでの、僕らの話。




「…柏木くん?」

「………」



あのとき、俺が電話に出ていれば。

もっと早く、着信に気づけていれば。

そんな些細なことで、なにかが絶対に変わったはずなのに。



「…どうしたの?大丈夫?」

「、」



トラウマみたいな恐怖が、体全部を埋め尽くすから……


押し寄せる後悔に飲み込まれそうで、


息ができなくなりそうで、


急いでハナエを抱きしめたら、自分の体が震えてることに気づいた……



「…どっか行ったのかと思った」

「え?」

「陽菜みたいに、…ハナエも消えたのかと思った」



本当は、こんな弱いとこ見せたくねぇのに。


なのに背中に回ったハナエの手が、体を擦ってくれるから……


弱い自分が全部、隠そうとしても全部、勝手に出てくる。



「大丈夫だよ、私はどこにも行かないから」

「、」

「他に行く場所なんて、ないもん」

「、…」



さっきまでハナエが見ていた窓からは、月が見えた。



丸い、満月。


体を離して見上げた空は、秋を知らせる、高い夜空だ。


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