やがて春が来るまでの、僕らの話。



ベッドだって布団だってあるのに、朝起きたら俺たちは床の上に並んで寝てた。

思い出すように記憶を辿ったら、「ここに寝転んだら月が見えるよ」って笑うハナエの言葉が頭に浮かぶ。


どうやらあのあと、二人してガチ寝したらしい。


背中、痛ぇ……



「………」



月が見えてた窓からは、朝の光が差し込んでいる。



「……眩し」



顔をしかめながら隣を見たら、床に寝てる俺たちの手がしっかり繋がれていることに今更気づいた。


なんだこれって。

手ぇ繋いで寝るとか、俺たちどんだけ可愛いんだって。


子供じゃあるまいし、もっとやることあんだろって、



………思うのに。



寝息を立てて眠るハナエの横顔が、なんかすんげぇ嬉しくて。


愛しくて。


愛しくて……


朝っぱらからキスでもしてやろっかなって、唇を寄せてみるけど。



「………」



躊躇った唇は、ほっぺに軽く触れることしか出来なかった。


いや、でもやっぱり口にしてみようかなって、考えてたら。



「…んー……」



タイミング悪く、ハナエが起きた。


あーあ、最悪。



「なんで今起きんだよ」



なんて、ほんとはちょっと安心してるくせに。

なんでかな、こいつには簡単に触れちゃダメな気がすんの。


キスなんてしたら、なにかが変わっちゃいそうで。


絶対できねぇ……


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