超人気アイドルは、無自覚女子を溺愛中。



頬に添えられたままの手をとり、両手で包み込む。

ドキドキしすぎて息が苦しいけど、この手を離したくない。


そう思った。



「ゆきちゃん……」


空いているほうの手をわたし腰に回して引き寄せられた。

距離がぐっと近くなり、目の前に空野さんの顔がある。


やっぱりすごく整っていて、綺麗で見惚れる。




「おれも、聞きたいことがある」

「なんですか?」



しゃべるたびにかかる息がくすぐったい。

腰に回された手に力が入り、そこから熱が広がっていき体温が急上昇する。



「一緒に勉強したり海に行ったりしてたあの男ともう付き合ってる?」

「それって黒瀬くんですか?」

「たぶんそう」

「付き合ってないですよ」

「そっか」

「ふっ……」

「なんで笑うの」



拗ねたように口を尖らせた空野さん。

だって……。
笑っちゃうに決まってる。



「同じ質問を今日黒瀬くんにもされました。空野さんと付き合ってるのかって」

「そうなの?」

「息ぴったりですね」

「それは違うと思うけど……」



空野さんが苦笑して目を逸らすけど、もう一度わたしに視線を戻す。




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