世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。
 日が陰りディアルの休日の終わりが近づいてきた。青龍騎士団は目下盗賊団討伐戦の実行している。交代で団員たちは休みを取っている。
名残惜しいと思った。この少女と次はいつ逢えるのだろうか。何となく、もう二度と逢えないような気がした。抱き寄せて口づけをしたい。華奢な体が粉々になるまで抱きしめたいと思った。そんな事をしたら嫌われるだろうな。腕を掴んだだけで警戒したアリシアを思い出す。
「アリシア、またここに来てもいいか?」
ディアルは初めて彼女の名前を呼んだ。親近感が少しでもアリシアにうまれるように。次会った時に名前を呼べるように。
「はい、私をみかけましたらお気軽に声をお掛けください」
ディアルはそっと手を差し出し握手を求める。アリシアはそれに応えるように手を差し出した。強く握られた握手だった。
帰り際にアリシアはディアルを呼び止めた。
「一つしかありませんが差し上げます」そう言ってアリシアはディアルにポーションを差し出した。

「ありがとう、お守りにするよ」
ディアルはそう言ってドラグニールの街に帰った。
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