世界でただ一人のヒーラーは生殺与奪を握ってます。
アリシアは悲痛な叫びをまくしたてるようにディアルにぶつけた。ディアルの美しいと言った言葉が自分に最も似つかわしくないと思っていたからだった。醜い心。醜くなった心。アリシアは自分をそう思って生きている。

ディアルはアリシアの言葉を嚙み締めるように聞いた。まるで敵国にいるようだった。それでもディアルは世界にただ一人の癒しの手を持つアリシアに力を使わせたいと思った。奇跡の魔法。軍属としての考えがそう思わせる。
「それでも君は・・・人を助けるべきだ。限りある魔力の中で全てを助けることは無理だろう、もし、仮に俺が傷をおって君の魔法を受けれないとしても俺は恨まない。俺以外の人を大勢助けたのだろうと満足するだろう・・・」
「そんな方は稀です」
「そうだ・・・俺は稀な人間なんだ。何と言っても青龍騎士団随一の槍使い、ディアルだからな」
冗談交じりに、誇らしげにディアルは言った。
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