溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
同時に車のスピードが加速し、反動で助手席の背に体が押し付けられる。

「え、え。どうして」
「急いでるんだろ? だったら送っていく。その、翔矢って男はどこで待ってるんだ」
「えっと、翔矢は……」
 
それまでの軽やかな声と打って変わった侑斗の固い声に、梨乃は戸惑った。

「S高の正門前です。そこで待ってます」
「S高? 妙なところで待ち合わせるんだな。あの辺りに楽しめるような場所はないだろう。あ。その翔矢って男が近くに住んでるのか?」
 
侑斗の声は相変わらず低く、何故か刺々しい。
チラリと横顔を見ると、決して機嫌がいいようには見えない。

「あの、翔矢はS高の近くに住んでるわけじゃなくて、当然私と一緒に住んでます」
 
初めて言葉を交わす相手にどうして翔矢のことを話さないといけないのだろうと、梨乃は混乱する。
改めて考えると、こうしてこの車に乗っているのも、やはりおかしい。

「……なるほど。一緒に住んでるのか。わかった。じゃあ、S高に送っていけばいいな。電車だと一時間近くかかるだろうけど、車なら二十分で着く。で、何時に待ち合わせなんだ?」

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