溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
投げやりな侑斗の声に、梨乃はおずおずと答えた。

「2時から三者面談なので、その10分前に正門前に迎えに来てるはずです」

梨乃は再び腕時計に視線を落とした。
13時を少し過ぎたばかり。
車で20分なら余裕で間に合う。
不機嫌な侑斗には申し訳ないが、このまま送ってもらおうと決めた。

「すみません。お忙しいとは思いますが、S高までお願いします。いよいよ弟の受験校を絞る大切な面談なので遅れるわけにはいかなくて。本当にすみません」
 
梨乃は座席から体を起こし、深々と頭を下げた。

「三者面談? 弟さんはS高の生徒なのか?」
 
頭を下げる梨乃の頭上に、困惑している侑斗の声が響いた。

「はい、そうです。S高の3年生なんです。それがなにか?」
「いや。……ああ、だから一緒に住んでるんだな」
「そうです。両親とは別々に暮らしているので、私が保護者として面談に行くんです」
「なるほど。S高ね。だったら弟さんが目指してるのは官僚や弁護士か? 志望校はまだ決まってないのか?」
 
大通りを右折しながら侑斗は思いついたように問いかける。
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