溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
「侑斗さんが人気なのは知ってるんですけど、興味がないというか正直それどころじゃなくて。とにかく今は弟のことで頭がいっぱいで。中でも予備校の冬の特別講習の費用をどうしようかと。だけど、あれだけ頑張ってるし、どうにかしないと。……あ、再びすみません」
 
梨乃は翔矢の話ばかりをしていると気づき、慌てて口を閉じた。
侑斗は「興味がないって言われたのは初めてだな」と苦笑いを浮かべた。

「どれだけ弟が好きなんだよ。 まあ、K大医学部は国内最難関だからな。よっぽど優秀ってことか」
「すみません。弟自慢してましたね。私の悪い癖なんです。だけど、弟が自分で稼ぐようになるまでは私が面倒をみないと……。って、言っても意味が分からないですよね。すみませんひとりでペラペラと」
 
翔矢のこととなるとつい饒舌になる。そんな悪い癖が出た梨乃は、口を閉じた。
侑斗は迷わず車を走らせる。
卒業生だからかS高までの道のりには慣れているようだ。

「1時半までには着きそうだな。S高の向かいにショップがあったはずだから、面談の前に新しいスマホを買いに行こう。弁償させてくれ」
「送ってもらったうえに弁償なんて申し訳ないです。面談の後に行くので気にしないでください」
 
気のせいかスピードが上がった車内に、梨乃の慌てた声が響いた。

「気にするに決まってるだろ。俺が壊したようなものだから」
「そんな、あれは私がちゃんと前を見てなかったからで、侑斗さんには関係ありません」

梨乃が必死でそう言っても、侑斗は肩をすくめるだけだ。

「俺も最近新しいスマホに変えたんだ。最新機種だし、どうせなら同じ機種にすればいい」
「……もう、本当にいいんです」
「写真もかなりキレイで楽しいぞ」
 
梨乃の言葉を無視して言葉を続ける侑斗に、今はなにを言っても無駄だと、梨乃は肩を落とした。


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