溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
「担任が合田先生か。先生は今もバスケ部の顧問を続けてるのか?」
「いえ、去年、腰を痛めたと言って顧問から離れたんです。50歳を過ぎて潮時かなと残念がってました」
「50か。俺の担任をしていたときは30代半ばの熱い先生だった。バスケ部の顧問だけじゃなく生徒会もみてて、俺が生徒会長の時には結構やりあったな」
侑斗は懐かしそうな表情を浮かべ、手元のコーヒーを口にした。
向かいの席で相槌を打つ翔矢は、ミックスサンドを食べながら侑斗の話に耳を傾けている。
三者面談の後、近くのカフェで梨乃を待っていた侑斗を紹介されたときには驚いていたが、侑斗のペースにつられ、話を弾ませている。
侑斗は翔矢にとってS高の先輩であり、志望大学の卒業生。
おまけに高級ホテルとして名高い白石ホテルの経営者一族のひとりだ。
見た目も肩書も抜群の男性を姉である梨乃が連れて来たとなれば興味は尽きず、隣に座る梨乃の困り切った表情など目に入らない。
「翔矢……」
梨乃はこの場を早く切り上げたいのだが、翔矢が侑斗からK大についてあれこれ聞いている中言い出せずにいた。
結局、梨乃は翔矢の三者面談の前にスマホのショップに連れて行かれた。
そしてお勧めだという最新のスマホが梨乃の目の前に置かれたかと思うと、侑斗はさっさと支払いを済ませてしまった。
最新機種など必要ないと言ってもあとの祭りで、梨乃はその強引さと手際の良さに脱力した。
おまけに手続きが間に合わず、梨乃は仕方なく侑斗にスマホの受け取りを頼み、面談に急いだのだ。