溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
「翔矢、そろそろ……」
梨乃は自分にはよくわからない話を続ける侑斗と翔矢に声をかけるが、ふたりとも耳に入らないのか顔を向けようともしない。
梨乃はため息を吐きながらも、手の中にある新しいスマホはやはりうれしく、口元をほころばせた。
最新機種でかなり高価なもの。
梨乃は代金は返すと何度も訴えたが侑斗は必要ないと言って頑として譲らず、それを渋々受け入れた。
申し訳ないと思う反面、新しいスマホに気持ちが上がるのも確かだ。
侑斗と色違いの同機種。
梨乃が傷ひとつない画面をワクワクしながらなぞっていると。
「姉さん、白石さんが車で家まで送ってくれるって」
「……え、なんで」
翔矢の言葉に梨乃は慌てた。
「白石さん、ちょうど帰り道だから送ってくれるんだって。聞いたら新車らしいし、俺も乗ってみたいんだ」
「わざわざ送ってもらうなんて申し訳ないよ」
「いいよ、別に。ここからだったら三十分もかからないし、どうせ途中だから」
焦る梨乃に、侑斗はなんてことないように声をかけ、立ち上がった。そして。
「この時間なら混んでないだろうし、行こうか」
梨乃の返事を待たず、さっさと店を出て行った。