溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
今の梨乃の収入では、これ以上の家賃は払えないのだ。

「あの、翔矢がいて、独り暮らしというわけでもないので、大丈夫です」

相変わらず表情が硬い侑斗に、梨乃は気まずげな笑みを向けた。
侑斗は生まれたときから広い家に住み、警備体制も整った環境で育ってきたはずだ。
だからオートロックのないマンションに住んでいる梨乃が心配なのだろう。

「お気遣いありがとうございます。でも、翔矢がこの先独り暮らしを始めるときにでも、引っ越しは考えます。今日の三者面談で、K大の合格まで気を抜くなと先生がおっしゃってたので、まずは翔矢の合格最優先です」
「それは違うだろう、まずは安全が最優先……いや。いい。俺が無理に引っ越しを押し付けるわけにはいかないな。俺としても、翔矢君には高校だけじゃなく大学の後輩になってもらいたいし」
 
梨乃は侑斗が梨乃だけでなく翔矢も心配しているとわかり、申し訳なく思った。
今日初めて言葉を交わした相手なのにここまで親身に梨乃と翔矢のことを考えてくれている。
梨乃は侑斗がマンション前の人だかりの中から連れ出してくれたときに芽生えた感情を思い出した。
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