溺愛は蜜夜に始まる~御曹司と仮初め情欲婚~
すでに昨日まで住んでいたマンションが引き払われてしまった後で抗議しても遅いとわかっているのだが、やはり納得できない。
「私、引っ越しをOKした覚えも、侑斗さんのこ、こん……婚約者……になったつもりもなくて。あの、どうして笑ってるんですか」
梨乃は口元を上げて楽しそうに笑う侑斗に顔をしかめて見せた。
「いや、文句も言わずにここまで連れて来られる梨乃も俺のものって感じでいいけど、ようやく昨夜のショックから立ち直ったみたいで安心した」
「俺のもの……」
照れずにさらりと侑斗が口にした言葉に梨乃は後ずさるが、腰に置かれたままの侑斗の手が、それを阻んだ。
「そう、俺のもの。なんたって婚約者だからな。こうして俺の手の中で守るし存分にかわいがってやる」
「えっと……あの。侑斗さん、私はいつあなたの婚約者になったんでしょうか。……ううん、やっぱり私、昨日の晩、倒れたときに頭を打って、どこかおかしくなったのかな」
今朝の検査ではどこにも異常はなかったが、CTでは見つけられない損傷が脳に残っているのかもしれないと、梨乃は不安を覚えた。
うつむく梨乃の顔を覗き込み、侑斗は肩をすくめる。
「私、引っ越しをOKした覚えも、侑斗さんのこ、こん……婚約者……になったつもりもなくて。あの、どうして笑ってるんですか」
梨乃は口元を上げて楽しそうに笑う侑斗に顔をしかめて見せた。
「いや、文句も言わずにここまで連れて来られる梨乃も俺のものって感じでいいけど、ようやく昨夜のショックから立ち直ったみたいで安心した」
「俺のもの……」
照れずにさらりと侑斗が口にした言葉に梨乃は後ずさるが、腰に置かれたままの侑斗の手が、それを阻んだ。
「そう、俺のもの。なんたって婚約者だからな。こうして俺の手の中で守るし存分にかわいがってやる」
「えっと……あの。侑斗さん、私はいつあなたの婚約者になったんでしょうか。……ううん、やっぱり私、昨日の晩、倒れたときに頭を打って、どこかおかしくなったのかな」
今朝の検査ではどこにも異常はなかったが、CTでは見つけられない損傷が脳に残っているのかもしれないと、梨乃は不安を覚えた。
うつむく梨乃の顔を覗き込み、侑斗は肩をすくめる。