強引な無気力男子と女王子
 「本当に今日は起きてもらうからな!」
 そう言って強引に俺を引き起こし、肩を組ませる。
 そしてそのままリビングへと向かう。
 ガラガラと扉を開けるとリビングの眩しい明かりがまぶた越しにも伝わってきて、思わずギュッと目を瞑る。
 急に頬にペシペシと軽い衝撃がくる。
 「ほら、悠理、自己紹介」
 誰にだよ。
 そう思って薄く目を開けるとあくびが出た。
 「ふあああああ‥‥‥あ?」
 突如、俺のあくびは止まった。
 ー柳井真紘。
 まさにアイツが俺の目に映ったからだ。
 何でここにいるんだ?
 混乱しすぎて俺の口から出た音は、
 「逆ナンされてた人じゃん」
 というものだった。
 俺の言葉を聞いた真紘は「あはは‥‥‥」と苦笑している。
 それから一瞬コイツは考え込む顔になり、またすぐにいつもの顔に戻った。
 それから龍羽がすぐ真紘に話しかけ、連音がそれに続きにこやかな談笑が始まる。
 俺は混乱している頭を落ち着かせるために再びリビングのソファーで眠りについた。

 「「「「「「ええええええぇ!?」」」」」」
 ‥‥‥うるさ。
 何だよ、この叫び声。
 人が気持ちよく寝てるのに騒いで起こすなよ。
 そう思いながらも叫び声の原因が気になり、むくりと体を起こす。
 何やってるんだよ。
 何で真紘が土下座してんの?
 連音らは連音らで間抜けな顔してるし。
 それから尋問(?)が始まる。
 質問の内容からするに真紘が女だということがバレたようだ。
 ‥‥‥つか、連音はそんなこと知らねーでスカウトしてきたのかよ。
 相変わらず適当。
 俺がボーッとそんなことを考えている間にも話はどんどん進んでく。
 俺はそれをソファーに座ったまま眺める。
 急に真紘がそろそろと立ち上がった。
 そしてそのまま出口へとどこかぎこちないながらも確実に歩いていく。
 ‥‥‥どこ、行くんだよ?
 止めなければ。
 俺の中で何かが積もって溢れた。
 衝動的に俺は真紘の手を引いた。
 俺に不意打ちで手を引っ張られて真紘は何とも間抜けな声をあげながら尻もちをついた。
 ‥‥‥結構いい音。
 そんな失礼なことを考える。
 一方真紘は予想外とでも言いたげな目でこちらを見る。
 俺はそんな真紘の視線を無視して連音に問いかける。
 「ねえ連音、コイツモデルとして撮らねぇの?」
 すると龍羽、一、千晴、棗、香、連音の全員から「何言ってんだコイツ」とでも言うような顔をする。
 そんな顔で見んなよ。
 別に女子厳禁っていう決まりがあるわけでもあるまいし。
 顔は中性的でイケメンだし。
 「別に女だってこと隠してモデルやればよくね?」
 そう言うと真紘が意識しているのかどうかは知らないがあからさまにげっというような顔をした。
 そこまで嫌がらなくても。
 
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