強引な無気力男子と女王子
 なんだか、友達というより、小学生ぐらいの子供もを相手している気分だ。
 「ウォークラリーで、迷子にならないでよ?」
 「大丈夫だよ!」
 そう言って日葵は胸を張る。
 その謎の自信が怖いんだけど‥‥‥。
 あえて口には出さない。
 「あああああの、みみみみ宮代さん!」
 あり得ないぐらい噛みながら日葵に声をかけて来たのは同じ活動班の相澤くん。
 後ろには狭川くんもいる。
 クラスの中でも比較的大人しめの、無害そうな人達が同じ班で少なからず安心した。
 「どうしたの?相澤くん、狭川くん」
 日葵に名前を呼ばれて、二人は顔を赤くする。
 ウブだね。
 「そそそその!ウォークラリー、頑張りましょう!」
 またもや噛みながら二人は日葵と話をしている。
 会話に入らずに、周りをキョロキョロ見ていると、不意に、バスから降りて来た悠理と目が合った。
 反射的に目を逸らす。
 なんだか、この前の勉強会から私は悠理の目を見れなくなってしまった。
 スタジオで会っても避けてしまっている。
 どうしたんだろう、私‥‥‥。
 「悠理ぃ!どこ見てるのぉ?」
 悠理のほうから可愛くて高い声が聞こえてきて、私は思わずもう一度悠理のほうを見る。
 そこには、悠理の腕に自分の腕を絡める可愛い女の子がいた。
 なんだか、日葵とはタイプが違う女の子。
 日葵が桜なら、あの子はバラって感じ。
 そんな女の子に腕を絡められても、悠理は嫌がらない。
 いや、むしろ受け入れているような気がする。
 「はあ〜〜〜。やっぱりお似合いだよね、悠理くんと百華ちゃん」
 「そうそう!美男美女って感じ!」
 「本当に付き合ってたりして!」
 そんな女子達の声が耳に飛び込んでくる。
 ‥‥‥やっぱり、悠理にはあんな可愛い子がお似合いだよね。
 私みたいな男みたいな女より。
 ‥‥‥って私、何考えてるの!
 別に悠理と誰がお似合いでも関係ないし。
 変な考えを振り払うように頭をブンブン振る。
 「真紘〜!早くいこ〜!」
 「分かった!」
 日葵に呼ばれて、走り出す。
 まるで、その場から逃げるように。
 胸が、チクチク痛んだ。

 「はー!お腹一杯!」
 「流石に食べすぎでしょ‥‥‥」
 何事もなく、無事にウォークラリーは終わり。
 さっき、晩御飯のカレーライスを食べて来たところ。
 今はみんなで、これから行われるキャンプファイヤーの準備をしている。
 
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