ONLY YOU～過ちの授かり婚～
「私は大丈夫です。お父様。心配しないで下さい」

心配そうに眉を顰める父の耳許で囁く。
父は後ろ髪を引かれるような思いで私を見つめながら支店長室を出て行った。

「私にお話とは何ですか？山田支店長」

二人っきりになった途端、山田支店長の目の色が変わり、全身を舐めるように見つめて値踏みし始める。

「座りたまえ」

支店長は私にソファに座るよう促す。

私は足を揃え、背筋を伸ばし、隙を見せないように気を張った。

「お嬢さん、君は父の蓮見社長の為に何でもする覚悟はあるのかな？」

私の母は八歳の時に乳癌で死去。
それからは父の男手一つで育て上げられた。
少しでも、手助けをしたくて、大学卒業後は父の会社に就職。
父の秘書となり、片腕として仕事をこなした。



父は私と徹さんの婚約を大喜びした。
しかし、まだ彼と婚約解消したコトは話していない。

「覚悟はあります」

「本当に何でもするのか？」

支店長は私の決意を探るように念を押した。

「はい」

私はきっぱりと言い切った。

「そっか」

支店長は私の決意のほどを知り、ニヤリと気味の悪い笑いを浮かべた。
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