ONLY YOU~過ちの授かり婚~
「このまま離したくないな」
頭上から聞こえる彼の切なそうな声。

彼の方を見上げるとまたキスを落とされた。
次のキスは一度目のキスよりも激しく、何度も背筋に甘い痺れが迫り上がり、水音にカラダが戸惑っていた。

キスの後引き合う白い糸がキスの濃密さを物語った。

ギュッと抱き締められ、二人の世界に浸った。

「帰したくない」

彼の眼鏡の奥の切れ長の瞳は牡の欲望を孕ませ、理性と本能が切なげに揺らめいて見えた。

「時間があれば朝まで君と過ごしたいところだけど。
出張の準備があって帰らなきゃいけない」

彼は唇を噛み締め、顔を引き締め私を引き離した。

「頭取・・・」

私の方が二度目のキスで止め処なく彼を求めていた。

「頭取じゃなく、純也でいいよ」

「でも・・・」

「俺自身が許可してんだ。呼んで。君のコトも乃彩と呼ぶから」

彼の声が鼓膜に甘い響きを訊かせる。



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