貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 天明は、眉をひそめてその宮がある方向に視線を向ける。

「後宮にある監獄だ」

「監獄……」

 そこまで言うには、ただごとではない。

 たとえば皇帝を弑しようとした者なら即刻打ち首だ。罪を背負ってなお生かして閉じ込めておくとは、よほどの寵愛を得た妃でもいるのだろうか。

 難しい顔をした紅華に、天明は重ねて言った。

「だから、この先には絶対いかないと約束してくれ」

「それは、私に後宮を去れと言ったことと関係がありますか?」

 不意打ちに尋ねられ、天明は紅華を見つめた。

「あるかもしれないし、ないかもしれない」

「天明様は、今でも、私に後宮を去れ、と言いますか?」

「ああ」

 即答だった。二人は無言で見つめあう。

「わかりました。この先にはいきません」

 はぐらかされたと知った天明は苦笑した。ざあ、と風が吹いて一面の牡丹が揺れる。

 美しかった庭が急に恐ろしいものに思えてきて、紅華は少しだけ震えた。

  ☆
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