貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「あ、いえ……おいしそうなお饅頭ね。この白いものは初めて見るわ」

 見間違いだったかと思うほどに、睡蓮の笑顔はいつも通りのしとやかなものだった。紅華は何も聞けずに、目の前に置かれた菓子に目を移す。

 大皿には、一口大でまだほかほかと湯気のたつ饅頭が盛られていた。それと紅華と晴明の前に、白く水っぽいものが入った小皿が置かれている。


「こちらは、杏子の種を砕いて牛乳と砂糖を加えたものです。今日の紅華様のおやつに用意していたものでしたので、ちょうどよいと思ってお持ちいたしました」

 それは、白くてまるで豆腐のような食べものだった。試しに匙ですくって食べてみると、あっさりとした甘さが口の中に広がる。

「おいしい」

「これは、薬膳の一種で体にもいいんだよ。私の一番好きな菓子だ。……覚えていてくれたんだね、睡蓮」

 嬉しそうに言った晴明に睡蓮は、何もいわずに頭を下げただけだった。
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