貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 なんとなく気まずいまま紅華がその菓子を食べていると、ふいに、は、と晴明が顔をこわばらせる。その様子に気づいて、紅華はいぶかし気に首をかしげる。

「晴明様?」

「紅華殿、これは手をつけないで」

 饅頭を一つ食べた晴明が硬い声で言った。睡蓮も、何かに気づいたように顔をあげる。

「陛下」

「大丈夫だ。騒がないで」

 そう言った晴明の顔が、みるみる白くなっていく。尋常でないことが起きているのは、紅華にもわかった。

「晴明様、お顔の色が」

「心配しないで、紅華殿。私は、少し執務室で休むから。睡蓮、すぐにここを片付けて」

 口早に言いながら晴明は、残った饅頭を手巾で手早く包んだ。

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