貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「これを、氾先生に」
 
 その手巾を、晴明は睡蓮に渡す。その手も、微かに震えていた。

「かしこまりました」

「十分、注意して」

 微笑む晴明の額には、脂汗が浮かんでいる。その顔を見つめる睡蓮の顔も青ざめていた。

「すぐ氾先生をよんでまいります」

「いや、氾先生はいい。代わりに彼を呼んでくれ」

「でも」

「頼む」

「……わかりました」

 睡蓮はまだ何か言いたそうだったが、きゅ、と口を結ぶと身をひるがえした。


「お送りいたします」

 紅華は、立ち上がった晴明の腕をとった。

「紅華殿、私は一人でも……」

「こうやって寄り添っていれば、仲睦まじい夫婦に見えますでしょう?」

 どうやら晴明は騒ぎ立てたくないようだ。そう悟った紅華は、一見甘えているように晴明に寄り添ってその体を支えた。
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