貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「この後の謁見は、おとりやめになりますか?」

「そうはいかない。陽可国の皇帝として、大事な行事なんだ」

「でも、そのご様子では」

「大丈夫。ああ、その扉。そこが、私の執務室だ」

 そう言った息も、少し上がってきている。紅華が扉をあけると、中には天明が一人で待っていた。

「晴明」

「天明……悪いね」

「苦しいか? こっちに横になれ。今、睡蓮が解毒剤を持ってくる」

 晴明を案じるその姿に、紅華は内心驚いていた。普段の軽薄な態度からは想像もできないくらい、その顔は真剣だ。よほど晴明のことを心配していたのだろう。

「大丈夫だよ。毒の匂いを感じさせないようにだろう、量が少なかったのが幸いしたな。しびれが残っているが、呼吸も苦しくないし、しばらく休めば大丈夫だ」

「そうか」

 ほ、と息を吐いた天明が、崩れるように長椅子に座る晴明に手を貸す。
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