貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「結果だけを言うなら、狂った挙句に池に身を投げて死んだ。そういうことになっている。皇后を殺そうとしたので捕縛しました、なんて本当のこと言えるわけないからな」

「皇后を……まさか」

「本当らしいぜ。俺と離されてすぐのことだった」

 他人事のような天明の口調は変わらない。

 皇后や皇太子に対する暗殺未遂は、通常なら一族郎党皆殺しだ。だが、その一族こそが皇后であるために、おそらく自殺、という体を装うことになったのだろう。

 思ってもいない壮絶な話に、紅華は言葉もなく聞き入るしかなかった。


「そうなると、俺の存在にも困るわけだ。母の実家としてはそんな醜聞を起こした娘の子供の後見を渋ったし、なにより目の前には陛下に愛されて皇后となる妹娘と皇太子となる晴明がいる。だから俺は、母と一緒に死んだことになっている。俺は本当は、ここにはいないはずの幽霊なんだよ。……あっ、おい!」

 あまりのことにふらついて机に手をついた紅華を、あわてて立ち上がった天明が支える。

「そんなに驚くほどの話でもないだろう」

「驚く、話ですよ」

 天明は、青い顔になった紅華を長椅子に座らせて、お茶を渡してくれる。すっかり冷めてしまったそれを飲んで、紅華は息を吐いた。
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