貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「それを知ったのは、十になる前だったかな。それまで俺は、晴明と双子なんだと思ってた。それくらい、皇后は俺を大切に育ててくれた。普通なら乳母や侍女に任せる育児を、ずっと自分でしていたんだ。だから彼女に、住んでいた宮から出てはいけない、と言われても、その理由を考えたこともなかった」

「もしかして、後宮の一画にあるという宮は……」

 天明は、その宮のことを監獄と言っていた。牡丹の庭にあった離宮を思い出した紅華に、天明は頷く。


「本当の俺は、あの時母と一緒に死んだ。今生きているのは、ま、おまけの人生、ってところか。せいぜい楽しんでなるようになれ、だ」

「それで、影武者を?」

「やらされているわけじゃない。幼いころから、晴明のふりをして女官や侍女をだますのが楽しかったんだよ」

 ことさらに、天明は明るく話す。何でもないことのように。
 紅華は、あの時の会話を思い出しすと自分の言葉を激しく恥じた。

 あの牡丹の庭で、天明があれほどに怒った意味が、ようやく分かったのだ。

 紅華は、何も知らなかったのだ。亡き者とされている天明が、生きる意味を見出せるのは唯一、晴明として生きている時だけだったのに。晴明の影に埋もれるな、という言葉は、そんな天明には決して言ってはいけない言葉だったのだ。

(私はなんてことを……)

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