貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 声を詰まらせた紅華の両目を、ふいに天明が片手で覆った。

「俺のために、泣いてくれるのか」

 それは独り言のように、微かなつぶやきだった。

「天明様? 何を……」

「し」

 直後、紅華の唇にやわらかいものが触れた。びくり、と紅華は体を震わせる。

 重ねた唇を離して天明が囁いた。


「忘れろ。俺が勝手にやったことだ。お前は何も悪くない」

「嫌です」

「紅華?」

「忘れません。……決して」

 凛としたその声に、天明は泣きそうな顔ではんなりと笑った。

「そうか」


  ☆

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