貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「蔡紅華、まかりこしました」

「よく来たな。本来ならめでたい席だが、こんなことになってしまって申し訳ない」

 宰相もどことなくそわそわしながら言った。顔をあげた紅華は、心持ち声をひそめて聞く。

「では、皇帝陛下が崩御なされたというのは、本当なのですか?」

「まだ公表はできないが、本当だ。朝方、側近がお部屋に行った際には、すでに冷たくなっておられたそうだ。外傷もなく毒の可能性も低いという事からみて、おそらく心の臓が急に止まられるご病気が原因らしい」

「そうですか。わたくしも陛下のもとに嫁ぐ日を指折り数えて心待ちにしておりました。この身を潔斎し、陛下のために生涯身を尽くしてお仕えする所存でしたのに……とても残念に思います」

 紅華は、うつむき涙をぬぐう。ふりをした。
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