貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 激しい音をたてて開いた扉に、広間にいた官吏たちが、ぎょ、として振り向いた。

「おとなしくしろ。皇帝暗殺の容疑で捕縛する」

 声を張ったのは、禁軍将軍だ。

 わらわらと現れる羽林軍に、青くなって立ち尽くす者、あわてて逃げ出そうとする者様々で、広間は騒然となった。

 臨時朝議の名目で広間に集められたのは、主に皇帝暗殺に関わった者たちだ。その中に適宜配置された捕縛のことを知っていた者たちは、禁軍に協力して逃げ出す者たちの退路を断つ。

「張明はどこだ?」

 晴明が気づいて声をかけた。宰相はあたりを見回すが、確かに逃げ惑う人の中に戸部尚書である陳張明の姿がない。

「先ほど確認した時は、確かにおりましたが……永福」

「はい」

 宰相は、広間の官吏たちにもぐりこませていた永福を呼んだ。彼はこの春の耳目で中書省に入った宰相直属の新人官吏だ。

「戸部尚書はどうした?」

「あれ?」

 言われて初めて、永福は張明がいないことに気づいたようだ。

「おかしいな。確かにさっきまで……」

「肝心のやつから目を離して何をしていた!」

 きょろきょろしていた永福が、宰相に雷を落とされて首をすくめた。晴明が踵を返す。

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