貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 後宮で拉致された紅華は、手足を縛られて目隠しをされた状態で乱暴に箱に入れられ、馬車らしきものに揺られてどこかへと運ばれていく。辺りはさっぱりと見えないが、その時間からして、どうやら後宮を出てしまったようだと紅華は推測した。

 馬車が止まると、紅華は箱ごとまた運ばれていく。暴れようにも、みっちりと箱に詰められた状態では動くこともままならない。

 やがて、きい、と扉を開く音がしてどこかの部屋に入ったらしい。そこで箱から出され、どさりと放り出されるように下に置かれた。痛みを覚悟して体を硬くしたが、置かれた場所はやけに柔らかかった。感触からして、長椅子のようなものらしい。

(香の香り……?)
 
 箱の中にいた時は気づかなかった高貴な香りに、紅華は首をひねる。

(どっかの物置とか地面とかじゃなさそう)

「おとなしくしていろ」

 さらわれた時と同じ声でまたそう言われると、ぱたんと扉がしまった。
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