貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「いえ、もったいないお言葉ありがとうございます。この度は、まことにお悔やみ申し上げます」

「ありがとう」

 紅華の悔やみの言葉を聞いて、晴明は小さく息を吐いた。

「それで、少し事情が変わったんだけど、もう宰相に聞いたかな」

 は、として紅華は、困ったような顔で微笑む晴明をまじまじと見つめてしまった。

(そっか。後宮に入れば、私、この人の妻になるんだ)

 今のところの印象としては悪い人ではなさそうだし、若くて顔もすこぶるいい。はっきり言って、とても好みだ。
 口調からも優しそうな人柄がしのばれる。ただのお見合い相手なら及第点だろう。
 
 だだ問題は、相手が皇帝ということなのだ。そして、紅華は後宮にいる何人もの妃の一人となる。普通の夫婦ではない。

 寵を争う妃のなすべきことは、ただ世継ぎを産むことだけ。下手に皇帝など愛してしまうと、辛くなるのは目に見えている。

 それは、紅華が夢見た結婚ではなかった。

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