貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「後宮の用意が整うまで、こちらの部屋でお過ごしください」 

 紅華に用意されたのは、貴賓用の客室らしかった。見事な調度品の揃えられた豪華な部屋に、紅華は感嘆の息を漏らす。


「素敵なお部屋ね」

「お気にいらないところがあればすぐに変更いたしますので、お申し付けください」

「いいえ、とんでもない! こんなに素敵な部屋、ずっとここでもいいくらいだわ」

 あちこちに視線を移す紅華を、睡蓮は微笑ましく見ている。

「後宮にある蔡貴妃様のお部屋は、もっと素敵に整えられておりますよ。明後日には後宮も落ち着きますので、そちらに移っていただくことができます」

「明後日……今頃後宮は、大騒ぎでしょうね」

「そうですね。陛下はまだお若かったですし……いきなりのことに、宮城でも戸惑っております」

 しっとりとした口調で言いながら、睡蓮はお茶の用意を始めた。

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