貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
 呼吸と身だしなみを整えた紅華は、持ってきた供え物を祭壇に置くと、静かに目を閉じた。

(初めまして。まみえることはありませんでしたが、あなたの妃になる予定でした)

 初めての挨拶としてはどうかと思うが、他に言いようもない。
 後宮に入って妃となる予定は変わらずとも、相手が変わったことで紅華の運命も大きく変わった。不思議な縁を感じるのは確かだ。今だから言えることかもしれないが、一度、会ってみたかったと思う。

 そんなことをぼんやりと考えながら顔をあげると、睡蓮はが嗚咽を堪えてはらはらと涙を流していた。その姿は、色気すら感じるほど美しかった。

 わずかにうつむいて微動だにしない天明の表情はわからないが、一般的な葬送では睡蓮のように人前でも涙を流し、場合によっては大声をあげて号泣することもままある。

(天明様だって、お父様がなくなったんだから泣いても気にしないのに)

 そう思った紅華は、ふと気が付いた。
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