貴妃未満ですが、一途な皇帝陛下に愛されちゃってます
「どうしてみんなだまされるのでしょう」

 返答には、わずかの間があった。

「見ろよ」

 天明は、前の方の離れた位置で廊下の端によけて頭を下げる侍女たちを、視線だけで示す。それは、身分の低いものが皇帝に対して行う礼儀だ。後ろにいた侍女たちも、同じように礼をとっている。

 天明は、さらに声をひそめて低い声で言った。

「まじまじと俺の顔を見る奴なんて、ろくにいやしない。皇帝だと思い込んでいるから、みんな俺にひれ伏すんだ。つまり、肩書さえ皇帝だったら、どんな顔してたって関係ないんだよ」

 紅華は瞬いて天明をみあげた。その顔を、じ、と天明は見下ろす。


「紅華はきっと、俺の顔をきちんと見ているんだ」

「天明様……」

「嬉しかった」

 ぽつり、と漏れた声に、先に、は、としたのは天明の方だった。
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