仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
(時間が解決してくれる、なんて思っていた俺が甘かったんだろう)

 適当に父の話を聞きつつ、出会ったときのことを思い出す。


 その日は心底気が乗らなかった。

(またお見合いなんて冗談じゃない)

 両親はひとり息子の嫁を早く見繕ってやらねばと思っており、ずいぶん前から嫌になるほど話を持ってきていた。

 そのすべてに断りを入れていたけれど、今回は騙された形になる。

 今日、会えと言われた相手は両親が結婚して四十年目を祝う結婚式で世話になった相手だった。

「息子として礼を言うのが当然だろう」

 と言われてしまえば、拒み続けることが難しい。

 そうして当日を迎えた結果、明らかに礼を言うための場ではないだろうと気付いた、というわけだった。

(会って感謝するだけなのに、こんなホテルへ来る必要があるか)
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