仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「どうした、和孝。ぼうっとして」

 父に声をかけられてはっとする。

 適当に話を流していたことに気付かれたらしい。

「望月さんのことを考えてたんだろう」

「もう望月さんじゃないって」

「ああ、そうか。つい」

 父の用事は紗枝さんのことだけだろう。

 仕事が進むとも思えず、話を聞き続ける気にもならなかったことから、パソコンの電源を落として席を立つ。

「そろそろ帰るよ。紗枝さんも待ってるだろうし」

「うんうん、そうしなさい」

 両親は孫の誕生を心待ちにしている。

 実情をなにも知らないからだと思うと、また少し気が重くなった。

「そういえば、ずっと聞こうと思っていたことがあるんだ」

 帰り支度をする俺に父が話しかけてくる。
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