仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 その罪深さをわかっているから、紗枝さんに踏み込めない。

(本当に好きなら今すぐ離婚して解放するべきだ。……なのに、俺は)

 触れ合いのないふたりきりのベッドで、俺はいつも紗枝さんの寝顔を見つめている。

 いつか触れることを許されればいいと、きっと今夜も願うことになるのだろう。


 まっすぐ家へ帰り、緊張しながら玄関のドアを開く。今日も家の中はいい香りがした。

「ただいま」

 靴を脱ぎながら家の奥へ声をかけると、キッチンの方から「おかえり」という声が返ってくる。

 ジャケットを脱いでカバンを置き、リビングへ向かった。夕飯の香りがより強くなる。

「今日はなに?」

「ぶりの照り焼きとポテトサラダ。あと、ほうれん草のおひたしとなめこのお味噌汁」

「豪華だな」

「そうでもないよ」
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