仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
(こんなことをしたくらいで、この結婚生活が変わるはずないだろうにな)

 せめて気の利く夫だと好意を抱いてもらえればいい。打算で手伝いを申し出ていると知ったら、やはり嫌われてしまうだろう。

「ご飯はいつも通りの量で平気?」

「うん、ありがとう」

 お互いの間に流れる空気が張り詰めている。薄氷を踏んでいるようで、余計なことを言うのが恐ろしい。

 やがて食卓の準備が整った。いつものように紗枝さんと向かい合い、テーブルにつく。

「いただきます」

「召し上がれ」

 一緒に食事をとるこの瞬間、夫婦なのだということを実感できた。

「今日もおいしいよ」

「よかった」

「紗枝さんは料理上手だと思う」

「ありがとう」

「…………」

「…………」

 会話が終わってしまった。
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