仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 ぴしゃりと言い切った声からは明らかに怒りが感じられた。

 他人を怒るところが想像できなかった人だからこそ、叱られたことに衝撃を受ける。ついさっきまで熱くなっていた頭はすっかり冷めていた。

「ごめんなさい……」

「二度とするなよ。こっちの寿命が縮みそうだ」

 ぽん、と和孝さんの手が私の頭に乗った。

 そのまま滑って後頭部へ降りたかと思うと、ぐっと引き寄せられる。

「……!」

 和孝さんに抱き締められていた。思考停止する私の耳を安堵の吐息がかすめていく。

「怪我をしなくてよかった。誰彼構わず噛みつくんじゃない、まったく」

「う、うん……」

 状況をまったく理解できないでいると、ゆっくり腕が離れていった。

 場所が場所だけに仕方ないとはいえ、もう少し抱き締められたいと思った自分が恨めしい。
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