仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 顔の前に落ちた後れ毛を和孝さんの指がすくい取る。耳にかけてくれる些細な動きにびくりと反応したけれど、ぬくもりは離れていかなかった。

「紗枝さん」

「は、はい」

「そのまま目を閉じていていいから、逃げないでくれ」

「が……頑張る……」

 くすくす笑う声が聞こえて羞恥に頬が染まるのを感じた。

 目を閉じているせいで和孝さんの手の動きに敏感になる。

 後頭部へ滑った手が髪を絡め、私の首の後ろを軽く引き寄せた。

「――っ」

 ぎゅ、と引き結んだ唇になにか触れる。

 一瞬すぎて気のせいかと思ったけれど、たぶん柔らかくて温かかった。

(今の……今のは……)

「……気絶しないよな」

 心配そうに声をかけられて恐る恐る目を開ける。超が付くほど好みの顔が至近距離にあった。

「ひ……」
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