仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 集まっている人々を抜けて道路側へ出ると、見覚えのある車があった。その側でなぜか和孝さんがうちの社員に話しかけられている。

 どうやら名刺の交換をしているようだ。

(なんで?)

 疑問に思いながら近付くと、私が声をかけるよりも早く気付いてくれる。

「お疲れ、紗枝さん」

「ここでなにしてるの……?」

 名刺を交換していた女性社員たちが驚いた顔ですっと引く。同じ会社ではあるけれど、これまでかかわったことのない人たちだ。

「迎えに来た。今日は早く終わったから」

「いつもはもっと遅いのに……」

「新婚だし、ちょっと努力してみた」

(今までは努力してなかったの?)

 というツッコミはしないでおく。早く帰宅するには居心地の悪い家だったとわかっていた。

「ありがとう、うれしい」

「うん。俺も」
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