仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 ありがたく手を取って、その体温にまたどきりとしてしまう。

 背の高い人だからだろうか、手も大きい。私の手をすっぽり包み込んでしまうほどだった。

 そして穏やかそうな印象を後押しするように温かい。子供の頃、祖母の家でまったり過ごしていたときに感じたあの安心感をこの手からも感じる。

(もっとぎゅって握ってみたい)

 純粋に親切心で手を貸してくれた人に対し、とんでもない下心が湧き上がる。変な真似をせずに済んだのは、まだぎりぎり理性が残ってくれていたおかげだった。

 内心の興奮は隠してゆっくり離れ、脱げかけた靴を履き直す。その間も彼は私の手を支えてくれていた。

(こういうのって初めてかも)

 恋人がいた経験はある。でも彼らは私をこんなふうに扱わなかった。
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