仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
 私にわかったのは、和孝さんが初夜に妻を求めなかったという事実。

 そしてそんな夜はこの日だけに留まらず、何日も――今日に至るまで続いた。

(それが『恋愛結婚じゃない』って感じた一番の理由なんだよ、真里)

 私は妻として求められていない。

 今も結婚したのにキスさえ経験がなかった。

 それどころか、手を繋いだことも。

(一番和孝さんを近くに感じたのは、初めて出会ったあの瞬間かもしれない)

 転んだ私を支えてくれたぬくもり。そして差し出してくれた温かな手。あの思い出が私の中で今も消えずに残っているのは、あれが夫婦でいるときよりも線を感じずにいた時間だからだ。

(私、いらないのかな)

 拒まれた初夜のことを思い出すと泣きたくなる。
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