仮面夫婦は今夜も溺愛を刻み合う~御曹司は新妻への欲情を抑えない~
「……別に無理しなくていい」

 その言葉が胸に刺さる。

 私と和孝さんの結婚に明確な線を引いたひと言と同じだった。

(これは嫌味でもなんでもない。和孝さんは私を気遣ってくれてるだけ)

 そう思っても、じくじくと傷が広がっていく。

「無理なんて……してないよ」

「でも、疲れただろ」

「ううん、まだ大丈夫。本当に大丈夫だから」

 見上げた先で和孝さんは困った顔をしていた。

 それがまた、いたたまれない思いにさせてくる。

「せっかく来たんだし、西棟も見てみたい」

「そこまで言うなら……行こうか?」

「うん」

(うれしい――けど、もしかしてまた失敗した?)

 そう思ってしまったのは、西棟へ歩き出した和孝さんの横顔が渋かったからだった。
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