月に魔法をかけられて
地下の駐車場に停まっている副社長の車は、誰でも知っているエンブレムにLと書かれたシルバーの高級車だった。

「乗って」

そう言われて隣に乗っていいものかどうなのかを考えていると、副社長が中から助手席のドアを開けた。

「すみません……。ありがとうございます……」

助手席に座りシートベルトを締める。

「すぐに暖かくなると思うけど、ここに温度が表示されてるから寒かったらこのスイッチで調整して。こっちは全部美月の席専用の空調のスイッチだから。それでこれはシートが温かくなるスイッチね。今はすぐに温かくなるように最大にしてるけど、温かくなりすぎたら下げていいから」

副社長が私の前にあるスイッチを指さしながら説明してくれる。

「シートって温かくなるんですか?」

「そうだよ」

何でもないことのように答える副社長。

やっぱり、この人って副社長なんだ……。

さっき部屋にあった高級腕時計にしても、大きなベッドやテレビにしても、そしてこの車にしても、一般の人とは違う持ち物に改めて副社長なんだと感じてしまう。

私とは住む世界が全然違うんだな……。

そう思いながら窓の外に視線を移した。
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