月に魔法をかけられて
イルミネーションで輝く道路を通り過ぎ、興奮して華やいでいた車の中が再びしーんと静まり返る。

そのとき、「きゅるるるるるる──」と私のお腹がとっても大きな音を出して鳴り響いた。誤魔化しようのない音の大きさに、恥ずかしくて慌ててお腹を押さえる。

「す、すみません……」

真っ赤になりながら俯くと、運転しながら副社長がチラッと横目を向けた。

「朝から何も食べてないから腹減ったよな? 俺も夕飯まだだし、どこかで食ってくか?」

「だ、大丈夫です。早くお家に帰ってシャワーも浴びたいし、それに今日はお味噌汁でも作ろうかなと……」

そう答えながら顔がますます熱くなってくる。

あー、どうしてこんなときにお腹が鳴るの──?
もう恥ずかしすぎる。ほんとに最悪……。

私はお腹の音のせいで急に早く動き始めた心臓を片手で強く押さえながら、ワンピースの生地をギュッと握った。またお腹が鳴らないようにと心の中で必死で願いながら、もう片方の手でお腹を押さえる。

「そうだよな。風呂入ってないから早く着替えたいよな。そうか味噌汁か……。味噌汁いいよな。俺も今日は味噌汁にしようかな」

運転している副社長がひとりごとのように呟いた。

「ふ、副社長ってお料理とかされるんですか?」

「まさか。俺がするように見える?」

「いいえ。想像できないです」

「だろ? もっぱら外食かコンビニだな」

「えっ? コンビニですか?」

私は目を丸くしながら運転している副社長を見た。
< 162 / 347 >

この作品をシェア

pagetop