月に魔法をかけられて
「昨日のってやっぱり意地悪ですよね? 私に『副社長』と言わせるような質問ばかりしてきましたよね?」

助手席から昨日の真意を確かめるように副社長の顔を覗きこむ。

「きゅ、急にそんな顔して覗きこむなよ。びっくりするだろ……」

副社長は急に慌てたように少し顔を赤くしながら、左手で髪をかきあげた。

「あっ、すみません。でも私の言ってること合ってますよね?」

今度はチラッとだけ副社長に視線を向ける。
すると口元を緩ませながら意味深な笑みを浮かべた。

「あっ、その笑顔ですよ。副社長がその笑顔をされるときは大抵意地悪なときですからね!」

再び顔を覗きこみながら副社長を見つめる。

「さすが優秀な秘書さんだね。俺のことがよくわかってるじゃん」

副社長はまるで小さな子に「よくできました」とでもするように、私の頭にポンポンと触れた。
急に私の胸の奥がドクン──と反応する。
私はどう答えていいかわからず、そのまま俯いてしまった。
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