月に魔法をかけられて
俺は和菓子の話じゃなく、クリスマス商戦の話をしたかったんだがな。
仕方ない。帰り際によろしくお願いしますとだけ言っておくか……。
そう思いながら椅子から立ち上がったとき、村上社長がやっぱり納得がいかないというような顔をして俺に尋ねてきた。
「副社長の秘書の方は、どうして私のことを知っていたのですか?」
「私もどうしてなのかよくわかりませんがそのように申しておりました。もしかしたら元々秘書ではなくて、別の部署にいたからかもしれません」
「別の部署といいますと?」
「以前はマーケティング部にいた女性でして、この4月から私の秘書として仕事をしております」
「マーケティング部というと塩野さんのところにいた女性ですか?」
「はい。山内という女性ですが、もしかして村上社長はご存知ですか?」
「なるほど、山内さんが副社長の秘書でしたか。それでわかりました。私の甘いもの好きがどうしてバレているのかと……」
村上社長はやっと納得できたのか、大きく頷いたあと笑い始めた。笑っている理由がわからずじっと村上社長を見つめてしまう。
「いやぁ、塩野さんとのアポイントで御社に訪問したときは彼女がいつもお茶を持ってきてくれてね。塩野さんが応接室に来るまでいつも相手をしてくれていたんだ。毎回たわいない会話だったけど、ちゃんと私との話を覚えていてくれたんだね。山内さんにもよろしくお伝えください」
そう言って穏やかな笑顔を向けてくる。
俺は営業スマイルを浮かべて丁寧に頭を下げた。
「わかりました。こちらこそ社長に喜んでいただけて良かったです」
「では副社長、年末のクリスマス商戦、今年も頑張りましょう。色々とお手伝いさせてください」
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします」
俺は再び深くお辞儀をすると、村上ホールディングスを後にした。
仕方ない。帰り際によろしくお願いしますとだけ言っておくか……。
そう思いながら椅子から立ち上がったとき、村上社長がやっぱり納得がいかないというような顔をして俺に尋ねてきた。
「副社長の秘書の方は、どうして私のことを知っていたのですか?」
「私もどうしてなのかよくわかりませんがそのように申しておりました。もしかしたら元々秘書ではなくて、別の部署にいたからかもしれません」
「別の部署といいますと?」
「以前はマーケティング部にいた女性でして、この4月から私の秘書として仕事をしております」
「マーケティング部というと塩野さんのところにいた女性ですか?」
「はい。山内という女性ですが、もしかして村上社長はご存知ですか?」
「なるほど、山内さんが副社長の秘書でしたか。それでわかりました。私の甘いもの好きがどうしてバレているのかと……」
村上社長はやっと納得できたのか、大きく頷いたあと笑い始めた。笑っている理由がわからずじっと村上社長を見つめてしまう。
「いやぁ、塩野さんとのアポイントで御社に訪問したときは彼女がいつもお茶を持ってきてくれてね。塩野さんが応接室に来るまでいつも相手をしてくれていたんだ。毎回たわいない会話だったけど、ちゃんと私との話を覚えていてくれたんだね。山内さんにもよろしくお伝えください」
そう言って穏やかな笑顔を向けてくる。
俺は営業スマイルを浮かべて丁寧に頭を下げた。
「わかりました。こちらこそ社長に喜んでいただけて良かったです」
「では副社長、年末のクリスマス商戦、今年も頑張りましょう。色々とお手伝いさせてください」
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします」
俺は再び深くお辞儀をすると、村上ホールディングスを後にした。