月に魔法をかけられて
結局村上社長とは和菓子の話しかしなかったが、あの手土産のおかげで、クリスマス商戦の話も向こうから協力すると言ってきた。

あの感じだと、俺に対する印象も少しは変わってくれたはずだ。ある意味これは秘書のおかげと言えばおかげなのだが……。

俺から秘書に礼を言う?
いや、わざわざ言う必要もないよな。
先週の金曜日のことを言ってきたら、その礼と一緒に言っておこう──と思っていた。

だが、秘書はそれ以降も何も言ってこなかった。

そして金曜日。
俺は先週の詳細を聞くために、出張先の大阪から羽田に到着すると聡に電話をかけた。

「なんだよ壮真。こんな時に……」

「悪いな聡。仕事終わったか? 今羽田に着いたからこれから飯に行かないか?」

「………………」

いつもなら即OKする聡がなぜか何も言わない。

「どうしたんだよ。何か用事でもあるのか?」

「あっ、いや……。店は俺が決めてもいいか?」

「ああ、わかった」

どこか歯切れが悪い聡が気になりながらも、俺は聡が指定した丸の内のスペインバルの店へと向かった。
< 66 / 347 >

この作品をシェア

pagetop